腸腰筋という筋肉をご存じでしょうか?
体の表面からは見えないいわゆるインナーマッスルの部分で、体幹を鍛えるためには非常に重要な筋肉とはあまり知られていないのが事実。
お腹周りを引き締めるにはなくてはならない筋肉のため、腸腰筋を活かして、より健康で美しい体を目指していきましょう。
今回は、腸腰筋についての基礎情報や柔軟性チェック方法、体位別のストレッチ方法など詳しくご紹介していきます。
目次
腸腰筋とは?
まずは、腸腰筋がどのような筋肉なのかを知りましょう。
正しく理解することで具体的にイメージできるようになります。
理解が深まることで安全で、効果的なストレッチを行うことができ、日常生活で効果を実感しやすくなりストレッチの質が向上します。
腸腰筋はどこにある?
腸腰筋は、腸骨筋と大腰筋の2つを合わせた総称です。
この2つの筋肉は、機能的にはひとつの筋肉として働くので、腸腰筋という総称で呼ばれることがほとんどです。
腸腰筋 = 腸骨筋 + 大腰筋
腸骨筋は骨盤の内側から大腿骨(足の付け根からひざまでの骨)の内側上部にかけて、大腰筋は腰の背骨から大腿骨の内側上部にかけて走行しています。
体の深層にあるので触れにくいですが、腰骨の少し内側に指2,3本をぐっと押し込みながら、あお向けで股関節を曲げたり伸ばしたりすると、収縮している腸骨筋に触れることができます。
どんな役割がある?
腸骨筋は体幹と足をつなげる唯一の筋肉で、重要なインナーマッスルです。
主な役割は以下の通りです。
・骨盤を前傾させる
・股関節を曲げる
・股関節を安定させる
他にも、体幹と足の安定を図り、体幹と足をうまく連動するのを補助する役割があります。
見えないところにある筋肉ですが、運動面以外でも美しい姿勢や内臓の正しい位置にも関わる筋肉なので、私たちの生活において大きな役割を担っている筋肉です。
日常生活での腸腰筋
具体的な日常生活の役割を知ることで、モチベーションアップにもなります。ぜひ、筋肉を身近なものとして感じてくださいね。
日常生活で腸腰筋が力を発揮する場面をいくつかご紹介します。
・歩くときに足を振り出す
・坂道や階段をのぼるときに足を上げる
・あお向けから起き上がるときに上半身を起こす
以上のような場面で腸腰筋が働き、各々の動作の際に腸腰筋を意識することでストレッチ効果が高まります。
日常の何気ない動作でもストレッチは可能なため、意識的に動かすことでカラダの変化を感じられるでしょう。
腸腰筋が硬い人はどんな人?
腸腰筋が硬いということは、筋肉が短く硬く伸びにくくなっている状態です。
したがって、腸腰筋の起始部と停止部を近づけた姿勢が、腸腰筋を硬くさせる要因となります。
下記の項目に当てはまる方は、腸腰筋が硬くなっている可能性があるため、ストレッチが必要になります。
座っている時間が長い
オフィスワーク、トラックやタクシーの運転手などの職業の方は、座っている姿勢すなわち腸腰筋が伸びていない時間が多いので、硬くなりやすいです。
反り腰
反り腰の方は、腰の背骨が反るのに伴い骨盤も前傾していることが多く、腸腰筋が硬くなりやすいです。
今は痛みがない場合でも、将来的に腰痛になるリスクが高まります。
内また
股関節が内にはいっていると骨盤は前傾する傾向があります。骨盤前傾により腸腰筋が硬くなりやすいです。
腸腰筋の柔軟性を確認する方法
腸腰筋が硬いのか、柔らかいのかを確認する方法があります。
柔軟性を簡単に確認できるセルフチェックについて解説いたします。
代表的なトーマステスト
テスト方法
あお向けになり、右足を曲げて両手で膝をかかえます。上半身や頭は動かさず床についたままにしてください。
テスト結果
左側の太ももが床から離れたり浮いてきたりした場合、左の腸腰筋が硬いことを示しています。
反対側も同様にチェックしましょう。硬いかどうかだけでなく、左右差もチェックしましょう。
あお向けチェック
テスト方法
硬めのマットや床にあお向けになります。
テスト結果
腰が反る、膝が伸びない、あお向けが快適でない場合、腸腰筋が硬い可能性があります。
腸腰筋が硬い場合のデメリット
腸腰筋が硬くても現時点でカラダに悪影響がない。
確かに短期的な視点では日常生活に支障はないかもしれません。
しかし、硬い腸腰筋を放っておく起こるデメリットについて知る必要があります。
今は健康でも、将来的に不具合が出る可能性がありますので、生活にストレッチを取り入れることをオススメします。
もしかしたら、今悩んでいることが実は腸腰筋が要因だったということがわかるかもしれません。
腰痛を引き起こす
腸腰筋が硬いと骨盤が前傾しやすく、骨盤前傾に伴い腰が反ります。
正常な腰でも多少沿っていますが、反りすぎると腰の筋肉に負担がかかります。
その状態が長く続けば、腰の筋肉は硬く縮こまり、血流も悪くなり腰痛を引き起こします。
下腹がぽっこり出る
腸腰筋が硬い状態では、腸腰筋が正常に働きにくくなります。
体幹のインナーマッスルである腸腰筋の働きが低下すると、姿勢を保持する力、内臓を正しい位置に維持する力が低下し、下腹ポッコリの要因となります。
また、骨盤前傾の姿勢により下腹がポッコリして見えてしまいます。
バランスの悪い歩き方
腸腰筋が硬いことによって骨盤前傾になりやすいということは前述しました。
過度な骨盤前傾の姿勢で歩くと、足が前に出にくく、内またも助長され、腰をくねくねさせて歩くことになります。
腸腰筋ストレッチのメリット
前項にて、腸腰筋が硬いことによるデメリットを理解できたと思います。
それでは、腸腰筋ストレッチを続けることで得られるメリットについてご紹介します。
おなかが引き締まる
腸腰筋ストレッチで柔軟性が回復すれば、骨盤周囲の筋肉や内臓が正しい位置に戻り、腸腰筋だけでなく他の筋肉も働きやすくなります。
腹筋群が働きやすくなるので、おなかまわりの代謝もあがり引き締め効果が向上。
過度な骨盤前傾が解消されるため、お腹がすっきりして見え、見た目に大きな変化を与えるうれしい効果があります。
血流が良くなる
腸腰筋の適切な柔軟性になることによって、腸腰筋そのものの血流循環が改善します。
さらに、周囲の筋肉や内臓も正しい位置になり、血流が滞りやすい骨盤まわりの血行改善が期待できます。
歩行が楽になる
腸腰筋が正常な柔軟性を取りもどし本来の力を発揮できるようになれば、足が前に出しやすくなり、軽やかな歩行になるでしょう。
歩く能力は加齢に伴い低下していきます。何歳になっても自分の足で歩けるように今から取り組んでおきましょう。
腸腰筋のストレッチ方法 ー体位別ー
それでは、いよいよ腸腰筋のストレッチ方法をご紹介します。
寝位、座位、立位の3つのストレッチを紹介していますので、気分や体調に合わせて毎日続けてみてください。
また、各ストレッチとも姿勢をキープし3~5回呼吸し、3セットを目安に行いましょう。
①寝ながらできる腸腰筋ストレッチ
- うつぶせになり、足は骨盤の幅に開く。
- 両手を胸の横に下に置き、脇をしめる。
- 恥骨を床に押し付けたまま、上体を反らせて起こす。
- ひじが伸び切らないところでキープし3回呼吸する。
②座ってできる腸腰筋ストレッチ
- 椅子の右半分に座る。右足は椅子からはみ出ている状態。
- 右足をできる限り後ろへ引く。キープ、3呼吸。
- 反対側も同様におこなう。
③立ってできる腸腰筋ストレッチ
- 立位から右足を真後ろに大きく引く。
- 左の膝を曲げる。右のかかとは床から離れても良い。
- 右手を天井へあげる。キープ3呼吸。
- 反対側も同様におこなう。
まとめ
腸腰筋は、体の深層にある重要なインナーマッスル。
腸腰筋をストレッチすることで、美しい姿勢へと近づき、疲労しにくく、足が軽くなります。
現代社会の生活様式では腸腰筋は硬くなりやすいので、定期的に柔軟性チェックをしストレッチに励みましょう。